にやにやする

■ずいぶん前に「レンダリングタワー」というタイトルで出ていた宮沢章夫の本が、「アップルの人」というタイトルに変わって文庫になっていたのを見つけたので、つい買ってしまった。ひさびさのエッセイ集である。

■本の帯に「危険 電車の一人読み」と書いてあって、これは強ち間違いではないなと思ったのは、僕もかつて宮沢章夫のエッセイを電車の中で読んでいて、とても恥ずかしい思いをしたことがあるからだ。わざわざ本の帯にまで書いてあることから想像すると、同じ失敗をした人が何人もいたのだろう。宮沢章夫のエッセイは部屋で読むことが鉄則だ。何故ならばにやにやしてしまうからだ。電車の中で本を読みながら一人でにやにやしているところを、他人に見られることはひどく恥ずかしい。だから僕は部屋で一人、にやにやしている。