エレベーター

■年老いた老婆には二人の娘がいて、その二人の娘にはそれぞれ六つ子の子供がいるらしく、それはつまり年老いた老婆には十二人の孫がいるということになるが、その十二人の孫がまたそれぞれ六つ子を産んだら何人の曾孫になるのだろうと考えながら歩いているその街は、日本でも有数の秘宝が奉られた街で、路地のそこかしこに鳥居や男女の生殖器を象った物体が屹立しており、その界隈を私はケータイのディスプレイに表示された地図を頼りにさ迷っていたのだが、ようやく坂を下って地図に表示されているのと似たT字路に出ると同僚のKさんが立っていて、「お前の行く場所は逆方向だよー。ケータイを逆さにして歩くといいよー。まずは地下鉄の駅まで戻りなー」と教えられ、言われた通りにケータイを逆さにして坂を上ると地下鉄の駅へと潜る長い階段があったのだが、こんなに長い階段だったろうかと訝りながらその階段を降りるも、降りても降りても一向に地下に辿り着く気配のない深い階段は次第に湿度が増してゆき、青色に塗られた天井や壁は結露して黴が生え、息をするのも嫌になるなと思った頃に踊り場に出ると、そこにエレベーターがあるのを発見した私はちょうどいいタイミングで到着したエレベーターに乗り込むことができたのだが、どういうわけかそこは男子便所で、二人の中年の男が用を足し、それに背を向けて二人のOLらしき女性が立っているので、私はどっちを向いて立っていたらわからなくなって、でもエレベーターはそんなことなどお構いなしにどんどん地下へと潜っていく。

■というところで目が醒めた。おかしな夢は、わからないからおもしろい。